2014年11月21日 Vol 253

提 供  漁船保険中央会

■□■□━━━━━━━━「海外漁業情報」━━━━━━━━■□■□

「海外漁業情報」では、海外で操業される漁業者の皆さんへ、
操業上の注意事項や国際会議の結果等をお知らせしています。

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      国際捕鯨委員会(IWC)第65回年次会合の結果から

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去る9月15日から18日までスロベニアのポルトロージュで国際捕鯨委員会(IWC)

第65回本委員会が開かれました。

今回は水産経済新聞社の取材をベースに、委員会の結果を取りまとめましたのでお伝えします。

今回のIWCは、本質的な意味でその存在が問われる会議になったと言えます。

IWCは鯨類の適切な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能とするため、1948年に

設置されましたが、1972年以降、クジラ保護を主張する反捕鯨国が大挙して加入。

1982年に、多数となった反捕鯨国を中心に、資源枯渇を理由として商業捕鯨のモラトリアム

(ゼロ捕獲枠)を設定しました。

以後、捕獲枠の復活に向けて、捕鯨国対反捕鯨国の対立が続いています。

当初、捕鯨国15か国だった委員会は、現在、反捕鯨国が主流の88か国。

今回の委員会には64か国が参加しました。

この間、2007年から、捕鯨国対反捕鯨国の対立解消のための対話が持たれましたが、

2012年に暗礁に乗り上げ、本委員会を隔年開催へ変更し、今年が隔年開催の初年度となりました。

また、対話が行われている最中の2010年、豪州が日本の南極海調査捕鯨(JARPAU)を

「国際捕鯨取締条約」に違反しているとして、ICJ(国際司法裁判所)へ提訴しました。

今年3月、同法廷は、現行の日本の南極海の調査に対し、科学的観点から、改定するよう

判決を出しました。

日本政府は、判決を精査して、その趣旨を尊重し、新たな調査計画を提出し、調査捕鯨を

継続していく方針です。

今回のIWCは、ICJ判決直後の会議として注目されました。

そのため、日本は、ICJ判決の内容を精査した上で、同判決が

@国際捕鯨取締条約の規定は、捕鯨産業の秩序ある発展と海洋資源としての鯨類資源の

保存と利用を認めたものであること

A商業捕鯨モラトリアム規定は、捕鯨の全面禁止ではなく、むしろ、捕鯨禁止状況を

30年も引き伸ばしているのは国際法上違反状況にある――

と具体的文言を引用して加盟各国に丁寧に解説しました。

また、クジラ資源は、科学に基づいて適切に利用すべき海の資源であると明確に位置づけ、

商業捕鯨の正当性を強く主張しました。

今回の本会議には、我が国から、森下丈二日本政府代表(国際水産資源研究所所長)のほか、

鶴保庸介参院議員、山際大志郎衆院議員、伊藤忠彦衆院議員、玉木雄一郎衆院議員の

4人の国会議員、香川謙二水産庁次長ら農林水産省関係者他、平山達夫外務省経済局漁業室長など

外務省関係者が出席しました。

会議の主な結果は以下の通りです。

@今次会合の議長にはコンプトンIWCセントルシア政府代表が選出され、会合最終日には

次期議長にマイニーニIWCスイス連邦政府代表、次期副議長には森下IWC日本政府代表が

選出されました。

Aニュージーランド決議(鯨類捕獲調査)

ニュージーランドが提案した、IWC本委員会が検討するまで捕獲調査の許可を発給しないよう

勧告する決議案が投票に付され、賛成35、反対20、棄権5で採択されました。

この結果を受けて、我が国は「締約国政府の特別許可の発給を制限しようとしている」と指摘し、

ICJ(国際司法裁)の判決を踏まえた新たな南極海鯨類捕獲調査を2015年度から実施するため、

その取り組みを着実に進めていくことと、我が国の取り組みが国際捕鯨条約の規定に完全に合致し、

国際法および科学的根拠に基づくものである、と主張しました。

Bサンクチュアリ

ブラジル、アルゼンチンなどが共同提案した南大西洋サンクチュアリ設置提案が投票に付され、

賛成40、反対18、棄権2により否決されました。

C先住民生存捕鯨

デンマークが提案した、グリーンランド先住民生存捕鯨の2015―18年までの年間捕獲枠

(ミンク176頭、ナガス19頭、ホッキョク2頭、ザトウ10頭)が投票に付され、

賛成46、反対11、棄権3で採択されました。

D社会経済影響と小型捕鯨

我が国から、昨年のIWC科学委員会の試算結果を踏まえ、科学的根拠に基づくミンクの

捕獲枠(17頭)を設定する提案を行いましたが、賛成19、反対39、棄権2により

否決されました。これを受けて我が国から、反対票を投じた国は科学的根拠に基づく捕獲枠を

受け入れず、鯨類資源の持続可能な利用を否定したとの理解で、次回本委員会までに、

専門家会合を含め様々なレベルで当該国と「持続可能な利用のあり方」などについて

議論を行っていく意向を表明しました。

E海上の安全

我が国から、シー・シェパードによる我が国鯨類捕獲調査に対する妨害活動について、

映像を用いたプレゼンテーションを行い、関係国が実効的な措置を講じるよう、

強く要望しました。

併せて太地町からは、イルカ追い込み漁に関するシー・シェパードの妨害行為について

説明を行い、妨害を受けても漁をやめることはないことを表明しました。

次回のIWC本委員会は、平成28年に開催(場所未定)する予定です。

なお、IWC科学委員会は27年5月20〜6月4日まで、米国・サンディエゴで開催します。

                                    水産経済新聞
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