農畜産業振興機構の情報誌「畜産の情報」6月号では「査・報告」専門調査
「新しい国産飼料資源としての森林資材(チップ、パルプ)の活用〜林業分野と畜産分野の新しい接点を探る〜」という東北大学大学院教授寺田文典先生の報告があります。
 林業と畜産の連携というと、まず、林間放牧などによる下草利用を思い浮かべますが、この論文はチップやパルプといった、従来、製紙原料と言われてきたものを牛の飼料原料として活用できないかという研究と実践の報告です。
 我が国の森林面積は国土の6割以上といわれています。近年では森林利用率はむしろ減少してきているといいます。間伐の必要性や防災の面からも森林活用の必要性が指摘されているのですが、あらたに飼料資源として畜産との結びつきができれば、地域振興に貢献できることとなります。幸い森林と畜産は比較的近い距離に立地しており、この面からも有効であると思われます。もちろん、チップやパルプをそのまま牛の口にもっていっても食べてくれません。木質はセルロースが豊富ではあるものの、細胞を覆うリグニンという物質でおおわれており、これを分解してやるというひと手間をかけることにより消化・吸収しやすいものになるといいます。そのため、高温・高圧化での蒸煮やアルカリ条件下で加圧・蒸煮する技術が開発されており、前者は農林水産省のバイオマス変換計画で開発され、また後者は、製紙会社のパルプ処理ですでに行われている技術であるといいます。この論文では、チップ利用については杉チップを原料とした宮崎県の宮崎みどり製薬株式会社の取り組みと、パルプでは、日本大学生物資源学部梶川博教授への取材による飼料化の現状と日本製紙株式会社の取り組みについて報告されます。
 宮崎みどり製薬の取り組みは、杉チップを使って「ウットンファイバー」という商品名で月100トン程度をつくり、50トンは家畜飼料として、もう半分はトマトの土壌改良資材としての活用体験の報告と、後者のパルプはまだ試行段階にあるようですが、パルプのキューブ化など、大きな可能性を持っているとそれぞれの担当者は話しています。いずれにしても、身近な資源として活用されるには、価格の調整や利用法について林と畜の双方が理解を共有していくことが必要と述べています。

 詳しくは農畜産業振興機構の情報誌「畜産の情報」6月号をご覧ください。