日本の国民食といえば、ラーメンとカレーライス(ライスカレー)といわれます。両者とも海外生まれ日本育ちといった共通点がありますが、ラーメンの母国は中国、カレーライスはインドで、すでに完全に日本化してそれぞれの母国に原型はないといわれています。日本化したラーメンは日本食として今や海外にも飛躍しており、カレーライスはやや遅れをとっているかに見えるのですが、この日本型カレーライスも大手のカレーライス・チェーン店がヨーロッパやアメリカ、中国、東南アジアなどにチェーン展開を図りつつあり、まだ発展過程で、今後のさらなる展開と定着が期待されるといいます。
 この二つとも日本への紹介は明治維新前後であり、150年の歴史の中で日本化してきたものの、その生い立ちはかなり違った道を歩んだようです。詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、かいつまんで言うと、ラーメン(インスタントラーメンは別にして)は中華料理店での外食が中心になって発展しており、カレーライスはインドからイギリスにわたり、イギリス海軍等のレシピを通じてカレーが日本に紹介され、日本でのカレー・ルウの発明とともに家庭の中にはいりこんで発展してきたということです。最近では、ご当地カレーが注目されてきて、北海道のスープカレー、大阪のスパイスカレー、金沢のカツカレー、横須賀の海軍カレーのようにご当地カレーも開発されてきました。さらに、各地の名産品を取り入れたレトルトカレーも増えて、その数1000種を超えるのではないかということです。
 そこで、これからのカレーライスはどのように展開していくのだろうかということになりますが、著者は日本のカレーは出汁文化の上に展開しており、ジャポニカ米というおいしいコメをいかにうまく食するかに特徴があり、インドや欧米などのパン(ナン)文化とは一線を画するといいます。
大きな皿の上に白い飯と茶色いカレーがかかっており、一見単純なカレーライスですが各種のトッピングが可能で奥が深く、融通無碍なジャパニーズ・カレーが世界中で食べられる、今後のさらなる可能性・発展性が楽しみです。

 水野仁輔著イースト新書の「カレーライス進化論」出版:(株)イースト・ プレス 定価:本体840円+税