野生の鳥獣肉をフランス語でジビエというそうです。古来、ヨーロッパの貴族たちは領地内に生息する大型の野生の鳥獣を狩猟し、客をもてなすことを好み、料理も発展してきたといいます。ローストされることが多く、ワイン漬けやスパイスを使って焼き上げたものを主人が剣で切り分ける、その手際の良さがまた自慢の種だったとか。
 日本でも、武士は巻き狩りなどを好み、野生鳥獣をナマスなどで食したそうですし、各地にマタギという猟師たちがいたことが知られています。江戸時代には江戸市中でも野生鳥獣の肉を提供する店があったことはよく知られるところです。最近は野生鳥獣の農業被害が注目され、猟師の高齢化などによる減少や耕作放棄地の増加もあって駆除圧が減少し、野生のイノシシやシカ、クマが街に出てきて新聞ダネになることもしばしばです。
 そこで、こうした野生鳥獣を捉え、ジビエとして供給する動きが強まってきました。平成19年には鳥獣被害特措法、平成26年には環境省が鳥獣保護法を改訂して、保護から管理へと大きく舵を切りました。厚労省が平成26年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を定め、捕獲後の処理や調理についてガイドラインを作りました。野生鳥獣は地域資源として、地域活性化の食材になったのです。このレポートは概論につづいて、全国各地のレストランやテイクアウトのできる16のジビエ料理を提供する店を紹介するとともに、学校給食での利用例を福井県小浜市・内外海小学校で行われている自然を学ぶ教育の一環としてのシカ肉のカレーライスを紹介します。また、地域おこしのイベント情報として北海道から鹿児島県までジビエ利用の各種イベントとともに、鳥取県の「いなばのジビエ推進協議会」の活動、高知県・梼原町のジビエカーなどの取り組みを紹介しています。ペットフードとしての利用の可能性もあり、参考になることが多くありそうです。
 また、「食と命の在り方を広く伝えていきたい」と、京都府のNPO法人 いのちの里 京都村の事務局長林栄子さんはご自身が狩猟免許を取得し、年間5頭ほどのペースでシカを狩猟し食肉化しているという「べにそん会」(鹿肉)の活動も紹介しています。

 詳しくは農林水産省の広報誌「aff」1月号をご覧ください。