凱旋門賞(がいせんもんしょう)

グラディアトゥール パリの西側に広がるブローニュの森。実はこの森は、パリ市民の憩いの場所にしようと、ナポレオン3世によって作られた人工の森です。そしてパリの周辺で競馬が楽しめるように、ナポレオン3世は、この森の中に競馬場もつくりました。それが、1857年にフランス最大の競馬場としてオープンしたロンシャン競馬場です。競馬場の正門には、1865年のイギリスダービーに外国産馬として初めて優勝し、フランスの国民的英雄になったグラディアトゥールという名馬の銅像がそびえています。ここが今回ご紹介する凱旋門賞の舞台となるところです。

ロンシャン競馬場上空 凱旋門賞は、パリの秋が深まる毎年10月の第1週の日曜日に開催され、芝2400m、世界中のホースマンがあこがれる、世界最高峰のビックレースです。負担重量は、古馬に比べて3歳馬が軽く、牝馬と牡馬を比べると牝馬の方が軽くなっていますので、牝馬と3歳馬が有利とも言われるゆえんはここにあります。凱旋門賞は、フランス語で、“Prix de l'Arc de Triomphe”といい、現地の人は、日本語的発音で言うと略して「アーク」と呼ぶ人もいます。秋に開催される世界的なビックレースは、アメリカのブリーダーズカップや日本のジャパンカップもあり、世界各国でも様々なビックレースが開催されています。
 
ロンシャン競馬場正門 さて、その歴史をふり返ってみますと、第1次世界大戦の勝利を祝い、世界一のレースを目指して、若馬と古馬とが合いまみえる、これまでにはない国際競走を、秋に開催しようと創られたのが凱旋門賞です。
ヨーロッパの競馬は、冬の間はシーズンオフになるため、このレースは1年を締めくくる総決算のレースとも言えます。第1回凱旋門賞の開催は、当時の新聞各紙にも大きく取り上げられ、その後も世界を代表する国際レースとして順調に発展してきました。

ロンシャン競馬場スタンド凱旋門賞からは、多くの歴史的名馬が誕生しています。
イタリアが生んだリボーは、凱旋門賞2連覇(1955年、1956年)を含め、生涯16戦全勝の記録を残しています。フランスのシーバード(1965年優勝)は、フランス人の心に残る20世紀の世界最強馬といわれています。
ミルリーフ(1971年優勝)はイギリスで2度のリーディングサイヤーに輝き、その仔ミルジョージも日本のリーディングサーヤーになっています。ダンシングブレーヴ(1986年優勝)は1980年代のヨーロッパ最強馬といわれ、日本でも種牡馬として活躍し、キョウエイマーチ、テイエムオーシャンなどの重賞馬を生んでいます。トニービン(1988年優勝)も日本で種牡馬として活躍し、ウイニングチケットを始め、数多くの重賞優勝馬を生んでいます。パゴ(2003年優勝)は、現在日本で種牡馬となっています。

 凱旋門賞には、日本からも1969年のスピードシンボリをはじめとして、これまでに8頭が参戦しています。
 1999年にはエルコンドルパサー(蛯名正義騎手)が2着に入り、日本の競走馬のレベルの高さを世界にアピールしました。
凱旋門 これまで87回(2009年9月現在)の開催のうち、フランスの馬が60勝以上をあげています。昨年優勝したザルカヴァもフランスの馬でした。世界の強豪を集めたビックレースで、フランスは自国の競走馬の優秀さをアピールし続けています。フランス競馬にとって最も重要な、どこの国にも負けられないレースなのです。
 ナポレオンの勝利を記念して造られた凱旋門の名前を冠するレース。さて、今年の凱旋門賞どんな展開になるでしょうか。

*第88回(2009年)凱旋門賞の優勝は、
シーザスターズ(SEA THE STARS)(牡・3)
(騎手:M.キネーン)(2:26.30)でした