2005年7月11日 Vol.30
提 供  漁船保険中央会

■□■□━━━━━━━「海外漁業情報」━━━━━━━■□■□


   「海外漁業情報」では、海外で操業される漁業者の皆さんへ、
  操業上の注意事項や国際会議の結果等をお知らせします。
                 
 
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 国際捕鯨委員会(IWC)第57回年次会合総会について総括

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 今次年次会合の最大の焦点のひとつは、近年勢力が拮抗しつつあ
る鯨類の持続的利用を支持する日本などの国々と反捕鯨国の間の投
票バランスの行方でした。

 総会開催の数日前まで新規加盟国が増加する状況の中で、両勢力
が固唾を呑んで初日を迎えましたが、結局加盟国数は66カ国とな
り、実質的な勢力分布では持続的利用支持国が反捕鯨国をわずかに
上回る状況となりました。

 しかし、分担金の支払いが出来ず投票権を確保できない国、会合
に参加できない国があったため、投票の結果は、ほとんどの議題で
持続的利用支持国側がわずかの差で過半数に及びませんでした。
 
 他方、会議の流れを振り返ると、持続的利用支持国側が優勢を保
ったとの感がありました。

 総会初日はオーストラリア、ニュージーランドなどの強硬反捕鯨
国が「鯨類の殺戮」、「捕鯨は悪質な産業」などと言った挑発的な
発言を繰り返し、攻撃的な対応で会議の主導権を握ろうとしました。

 しかし、2日目の午前で会議の雰囲気が大きく変化しました。

 初日の議事運営が反捕鯨国に有利に進められたとの不満を持つセ
ントルシアを筆頭とする持続的利用支持国が、非公開代表会議の開
催を要求、これに対してオーストラリアが強く反発し、非公開代表
会議の開催を拒否する動議を行いました。

 非公開代表会議はIWCでは通常の議事の中でよく用いられる習
慣であることから、このオーストラリアの強引な動議には反捕鯨国
にも疑問を感じる国が現れ、投票の結果、オーストラリアの要求は
賛成20票、反対28票、棄権9票で否決されました。

 これは議事手続を巡る決定で、捕鯨の管理に関する実質的な議論
ではなかったものの、否決の瞬間議場の持続的利用支持国側から大
きな喝采が起こりました。

 持続的利用支持国関係者は、これを反捕鯨国に対する勝利と感じ
たのです。

 この決定を機に持続的利用支持国の勢いが増し、その後は持続的
利用支持国が多くの場面で議論の主導権をとるとともに、強硬な反
捕鯨国の発言から挑発的なトーンが消えていきました。

 また、穏健な反捕鯨国を中心に持続的利用支持国との対話をすす
めるとの空気が拡大しました。

 表面的には、今次会合でも捕鯨再開につながる決定には至りませ
んでした。

 しかし、すべての投票において持続的利用支持国と反捕鯨国の票
差が縮まり、商業捕鯨モラトリアムの撤廃などに必要な4分の3の
得票はまだ困難なものの、決議の採択を可能とする単純過半数は明
らかに射程距離に捉えたと言えます。

 そしてすべての持続的利用支持国がこれを感じ、来年の会合に向
けて前進の誓いを新たにしてウルサンを後にしたことがもっとも大
きな成果でした。

                        水産庁国際課

	
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