「特集:収益力の強化に向けて」の中で特に「アニマルウェルフェア的手法の導入による酪農経営の改革―北海道清水町の村上牧場と(有)あすなろファーミングを事例として―」という北海道大学大学院 農学研究院 講師 清水池 義治氏の論文をご紹介します。
畜産でのアニマルウェルフェア(以下AW)的な手法の導入は、いずれは検討しなければならないことでも、言うは易く行うのは難しいと考えておられる方は多いはず。そのあり方の一つとして参考になるのがこの事例です。
北海道・清水町の村上牧場と(有)あすなろファーミングは別会社ですが親子で運営しています。まず村上牧場はAW的な手法を取り入れた酪農経営で、2007年にご子息が継承したそうです。81頭のホルスタインと70haの耕地(採草地60ha、放牧地10ha)を使ってサイレージや乾草、青草(夏季)を主体に1頭当たり年間搾乳量7000s搾っています。平均産次は3.3産。耕地には土壌ミネラルを重視して沖縄産のサンゴ粉末やマグネシウムなどの微量要素を散布しており、ほぼ無農薬・無化学肥料を実現しています。生産乳の8割はあすなろファーミングに、2割は単協経由でホクレンに販売しています。また、放牧に耐え、あまり大型の牛にならないような種雄牛の精液を選び、配合飼料も道内産の活用を中心とした自家配合で、高品質乳生産とともにAWの基本である牛に無理をさせない、細かい配慮が行き届いています。
 あすなろファーミングは牛乳・乳製品加工・販売中心の会社で、現在12名が従事し、ノンホモ・低温殺菌牛乳を中心としてヨーグルトなど10種以上を生産販売しています。当初はノンホモのため上部にクリームが分離し、クレームが来たこともあったといいます。この対応に追われる中で牛の飼養方法に思い至り、デントコーンを使わなければ分離しにくい、1リットル瓶だと発生しやすいなどを発見したといいます。すぐに改善したことはもちろんです。また、ナチュラルチーズの生産も検討中ということです。
こうした村上さん父子の取り組みのきっかけは、ヨーロッパ酪農の視察が大きかったといいます。ヨーロッパの土壌はカルシウムを多く含む土壌であることを知り、土壌改良剤の散布にむすびつけ、長いままの麦稈の給与が第4胃変位の発生を防いでいることを知ると、乾牧草を長いまま給与するといった具合で、生産から販売までをつなぐことによって原因を探り、すぐに生産過程の改善を図る。これが高付加価値販売に結びつく強みがあるのではないでしょうか。

詳しくは農畜産業振興機構の情報誌「畜産の情報」1月号をお読みください。